これから建設業を創業しようとする方に読んでもらいたいブログ
11月17日~26日まで週二回、全四回で融資とそれにまつわるお話についてブログを書いてまいりました。
業種・会社規模に関わらず幅広く読んでいただきたい内容です。是非一度ごらんください。
今月から週1回ペースで業種別の創業について、注意点や検討して頂きたいことについて書いていこうと思います。
業種別の創業ブログの第1回目は建設業から始めます!
宮城県は建設業や関連する事業者が多い県です。
県内の就業人口の12%を建設業で閉めていた時期(2015年)も有った程です。
日本銀行仙台支店発行のレポート「宮城県内の建設業の現状と今後の展望」においても
県内の建設業に関する位置付けを「基幹産業」と表現する程、就労人口の多い業種です。
1 法人化するか、個人事業から始めるか
建設業の創業において多くの方が最初に考える事は「法人化するか否か」ではないでしょうか。
元々、独立心の強い方が多い業界なので
職人として一定期間勤務している方なら時期やタイミング次第で独立する!!とお考えの方も多いと思います。
ここで検討事項となるのが、法人化するか個人事業から始めるか?という問題です。
では、法人と個人事業では何が違うでしょうか?
現場単位では実務的に何も変わりません。
変わってくるのは経理・税務上の手続きの種類と量・難易度が変わってきます。
決算、法人税申告・消費税申告と納付(更に中間申告有り)は一般個人の知識で完結するには
かなりの難易度の高い仕事となるでしょう。
ここに、個人事業者・法人共通の業務が加わります。
源泉所得税の申告と納付、年末調査、社会保険、年金、労災保険、雇用保険なら毎年の更新と入社・退職がある度に行う手続き
社長1人と社員2~3名の会社でも、社員100人の会社でも法人であるからには上記手続きは変わりません。
また、建設業許可を取るなら決算後に変更届の提出、5年毎の更新、更に専任技術者や経営業務の管理責任者の変更が有った場合の手続
創業、法人化を検討するに当たり、まず覚悟する必要が有るのがこれら手続の数が増える事です。
また、少人数で運営する会社の場合は事務専任の社員が居ないことも多いので
税理士や社会保険労務士に依頼することも考えなければなりません。
創業・独立=法人化!と結論を出す前に一度立ち止まり
これら手続の量とコストの上昇を踏まえ法人化は直ぐに必要か否かを考える事も必要です。
2 建設業許可は必要か?
創業に際して法人化するか、個人で始めるかの検討と合わせて考える必要が有るのが、この建設業許可取得の問題です。
1の法人化の内容と被りますが、
建設業許可を取得するにはたくさんの要件を満たさなければならず
許可の要件を維持するのもかなりの労力を要します。
もちろん建設業許可を取れば受注する仕事の幅(特に金額面)も広がり社会的信用度も上がります。
注意すべきは建設業許可を取ることをゴールにしてしまうことです。
法人化・建設業許可取得を同時にお考えの方は
これら事務コストが個人事業かつ建設業許可無しと比べて大きく増えることを知ったうえで運営方法も合わせてお考え下さい。
3 法人化するメリット
建設業において法人化するメリットの一つは「信用度の向上」が期待できることです。
特に採用、新規の顧客開拓においては法人か否かの差を感じる事が多いと聞きます。
また、個人事業で運営ていても取引件数や取引額が大きくなると元請けから法人化・建設業許可を求められることも有ります。
根拠の無い非常に感覚的な事例ではありますが、社長の奥様から「法人化したら何となく家の将来を考えやすくなった」と言われたことが有りました。
これも一つの「(身内からの)信用度の向上」と言えるではないでしょうか。
事業、社名(のれん)、組織の維持の面でも法人の方が残しやすいというのもメリットと考えて良いでしょう。
4 建設業創業における注意点。その判断、資金繰り悪くします!
以下の事例は特に創業期に経営者がやってしまう資金繰りを圧迫する事例です。
よく分からないまま実行してしまい、しかも、修正が難しい事例です。
その1 入金サイクルと給与支払い日の設定、採用の人数に注意!
建設業の創業で一番最初に気を付けたいのが「給与の支払いサイクル」です。
安易に決めてしまい、開業後半年持たずに資金繰りが止まる!という事態もよく見かけます。
【入金・給与支払サイクルの例】
元請けからの入金サイクルが月末締め、翌翌末払い(60日サイクル)
5月末:請求書の締め → 6月 → 7月末に入金
給与支払いが月末締め、翌末払い
5月末:給与の締め → 6月末:給与支給
上記の場合、2ヶ月の間に給与の支払いが2回発生しているのに対し、売上の入金は1回しか有りません。
分かり易く60日サイクルと30日サイクルの比較だけにしましたが、ここに資材等仕入れの支払いサイクルも加わります。
複数元請けがある場合、その中に入金サイクルが更に長期間の所も出てくるでしょう。
完工ベースで請求するなら工期が長い仕事を受注する場合にも注意が必要です。
給与の支払い日を給与締日から2ヶ月先にすることは、今の時代に合う方法とは思えません。
一度に入る入金額を増やす、融資はもちろん、取引先へ入金サイクルについての交渉も合わせて必要になります。
建設業をスタートさせた方は売上の入金と支払いサイクルに関わる事案は
税理士やコンサルタントと十分打ち合わせの上で決めることをお勧めします。
その2 繁忙期に合わ過ぎない
人員の採用数、資材のストック量の調整も資金繰りをスムーズにする上で重要です。
例えば通常必要な社員数が3人、資材の量が100として
繁忙期には5人、資材の量が150になるとします。
創業初期の採用・仕入れでよくある事例として
これらを繁忙期に合わせてしまい資金繰りに窮してしまうということがよく有ります。
繁忙期に合わせた人員の採用を止めるべきとする理由については、その1をご覧頂ければ、ご理解頂きやすいと思います。
仕事を前倒しで準備することは良い事ですが、前倒しし過ぎると資金繰りに影響が出ます。
繁忙期に使うからと仕入れた資材を現場で使うのが6ヶ月後だった場合、その資材代金の回収は少なくても半年以上先になります。
人員なら外注先を用意したり、資材なら在庫管理の頻度と精度を上げたり
創業当初は資金繰りをスムーズにすることを優先して行うべきです。
資金の余裕を作るための必要な措置は専門家と相談ながら進めていきましょう。
5 親方から経営者へ
【現場管理から事業管理への移行】
小規模な事業者が多い建設業においては
創業期はもちろん10年以上建設会社を経営している社長様でも現場にて作業に従事している場合が多く見受けられます。
ご自身の目の届く(管理の行き届く)内は、十分に現場・経営管理の両立でも機能するのですが
現場作業に従事する時間が長ければ資金繰り、採用、育成といった
ご自身の事業の発展には必要な仕事に割く時間が減ってしまいます。経営者は時にじっくり考える時間が必要です。
社長ご自身が優れた職人である程、現場管理から経営管理へと移行できないでいる場合が多いように思えます。
しかし、会社を末永く更には次の世代へも仕事を継承させるには社長が現場から離れ、腰を据えて取り組む別の事がある筈です。
【親方から経営者へ変わるには人材の定着が必須】
上述の課題を解決するには社長に代わる優れた職人が必要です。
当たり前のことですが優れた職人に育つまでは時間が掛かります。
現場の管理まで出来るようになるには更に時間が掛かります。
社長が現場から離れることが事業の発展と継続に必要なのは上述の通りです。
つまり、事業の発展と継続の必須要件の一つは「人材の定着」と言えます。
建設業は業界全体で離職率が高い傾向に有りますので、逆の見方をすれば「人材の定着」が達成できれば
業界内において一つ上の領域に入った事になるのではないでしょうか?
最後までご覧頂きありがとうございました。
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